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デイサービスの給食おばさん2009-12-05
 原稿を書いておきながらUPする時間がなくてそのままになっていました。少し古くなりましたが、ひと月前の話です。


 10月中旬からちょっとだけ給食おばさんをしました。
 今年の5月から通い始めた週3日のデイサービスでしたが、そのデイサービスの支所に交替で時々人手不足の支援に行かされるうちに、給食おばさんの欠員が出て困られていたので、またもや料理をする羽目になってしまいました。いわゆる配置転換でした。


 新しいデイサービスは、都心部にありながら築100年以上の古民家をリフォームした小規模の施設です。ご利用者数は、定員13名ですのでとてもアットホームです。
 1週間に2〜3日ご利用される方が大半で、10時到着から17時の送迎までの時間、入浴、昼食、ゲームやリハビリ体操、ドライブなどの外出行事をして過ごしていただく施設です。要支援から要介護までの様々なレベルの方がおられますが、ここでは、お元気な方とそうでない方を曜日で分けています。


 日常を施設で暮らす老人ホームや老健センターなどと違って、日々ご家族の元へ送り届けるデイサービスは、飽きさせないで楽しく過していただくかということがとても重要でご利用者やご家族への待遇や気配りなどかなり違っています。
 自宅介護を諦めざるを得なくなったご家族と、自宅介護をまだ継続されようというご家族のこの違いは大きく、そのためご家族と施設間の関係もかなり違ってくるように思います。


 ここでは、一人ひとりの方々と真剣に向き合い、臨機応変に自由な個別対応ができています。当たり前のことですが、ご利用者絶対優先です。食事の好みも把握されており苦手なものはお出ししません。ご利用者の方々がいかにお元気で楽しく過ごしていただくことを所長はじめスタッフのみなさんが特別真剣に考えています。安全に関しても無事故というのは素晴らしいことです。ホテル並みの待遇だと言えば言い過ぎかもしれませんが、言葉使いも丁寧で接遇がすばらしいです。セレブの方が多いからでしょうか?
 整理整頓やお掃除も徹底して行き届いています。週一度は、家具を動かしての大掃除!(ピカピカ!)


 朝のワゴン車の到着から、施設には活気がみなぎって笑いいっぱいの一日がスタートします。ご利用者の方々の元気を誘い出すように、スタッフの持ち上げたり下ろしたりのユーモアや冗談、突っ込みで、まあ賑やかなこと!うるさいくらいの笑い声がキッチンにまで響いてきて調理をしながら私も可笑しくて笑ってしまうことがしばしばです。しかし、礼節は徹底しています。


 10畳ほどのダイニングキッチンが事務室も兼ねています。ご利用者ももちろん出入り自由で、わずかに1台ある事務机で仕事をしているスタッフの席の横の椅子で、入れ替わり立ち替わり世間話をしていかれます。事務が捗らないでしょうに、スタッフは常に笑顔です。調理している食事の匂いが漂うのも家庭的でいいですよねえ。


 スタッフの昼休みも、そこのダイニングキッチンにある配膳台兼テーブルで食事をしますから、早々と昼食を終えて個人的に世間話をなさりたいご利用者は、またやって来られます。スタッフは、お弁当を食べながらコーヒーやジュースなどをお出ししてお相手をします。買ってきたお昼ごはん用のパンやお菓子のお裾分けもしながら。スタッフの昼休みは全く確保されていません。しかし、ここではそれが当たり前ですしとても楽しそうです。ほんとうは、2階にはちゃんと休憩室もあるのですが、ご利用者とお話をしたり身近な雑用をするうちにお昼休みは終わってしまいます。もちろん休憩時間でないスタッフは、食事の介助や午睡の準備をしたり服薬したりと大忙しです。(給食の残りは、検食用としてスタッフに出します。)


 帰宅願望の虫が起こったご利用者には、スタッフは事務机の横にお連れして、「すいません、監督ぅ〜、実は私、監督にご相談があるのですけど・・・」と切り出し、”悩み相談”をしたり、「お忙しいところ申し訳ありませんが、私、以前からずっとお訊ねしたいことがあったんですけど・・・」などと言って巧みに話に引き込みます。
「家内が家で待っていますので・・・」「会議が始まる時間なんです!」「今から東京へ行かなければいけないんです!」などの訴えをはぐらかしてご利用者に話を促す腕前は実に巧妙です。
 ご利用者の以前の職業などにより、”監督”だったり”師匠”だったり、”先生”だったりします。私もつい話に引き込まれて、調理をしながら話に加わったり大声で笑ったりしていました。


 外出行事も頻繁です。気候が良くお天気のいい日は、お茶やお菓子を持って午後からほとんどドライブです。施設の庭に生っている富有柿をたくさんタッパーに詰めたりもして・・・。桜のお花見、コスモス、紅葉見物、産直市場への買い物、ファミレスでお茶をするなんてこともありますし、途中の店でお饅頭やたこ焼きを買って目的地で食べたりもします。日頃、ご家庭でなかなか外出が自由にできない方たちですのでドライブは大変喜ばれます。自由参加ですから、居残りを希望された方は創作作業などで、先日は、クリスマス用のリースを作られていました。


 給食担当は、私と同じ年齢の10年以上勤められている方と私の二人だけの交替勤務でした。つまりお互い単独で作ります。献立や材料は、一週間毎に本部から手配されていますが、小規模ですのでその日のご利用者に応じて与えられた食材で自由に献立を考えることができます。私の畑の野菜も使いました。
 料理店ではなくお年寄りがお相手ですから、一汁三菜にフルーツを加えたメニューが基本で、10数名というのは、ちょうど作りやすい人数です。嬉しいことに食器もかなり上等で品のいいものが備えられています。


 介護の技術を更に身に付けるために始めたデイサービスでしたが、まさか給食おばさんになろうとは思ってもみませんでした。しかし、施設介護は、複数の人に対してまずは事故のないようにと気配り、目配りの細心の神経を遣う仕事ですから、介護職よりは、冷蔵庫の食材で気ままに思いつく料理を作っている方が楽ではありました。


 給食は、どこの施設でもそうですが、ご利用者の程度に応じて普通食のほか、一口大食、刻み食、ミキサー食などがあります。普通食以外の方は食欲のない方が多く嚥下状態も良好とはいえません。普通食を作りながら、食欲のない方にどうしたら食べていただけるか考えさせられました。お粥も、土鍋でコトコト炊きました。一般的な施設では、炊いたご飯に水を加えて再加熱して作るところが多いようです。でも、一旦炊いたご飯は、再度加えた水と仲良くなることはできないですね。最後のお茶碗には、とろみのない水分だけが残ります。


 いい施設で楽しく仕事をさせていただいたのですが、87歳の”お母さん”のヘルパーの仕事を徹底させたくて離れることにしました。”お母さん”の認知度は進む一方ですし、一人で頑張られているお嫁さんをとても放って置けない気がして・・・。それに私には、ゆったりとマンツーマンでやるヘルパーの仕事の方が似合っているような気がしています。それも、派遣ヘルパーと違って時間にも仕事にも制限のない、介護保険適用外の個人契約なのですから自由なサービスをさせていただくことができます。(贅沢な仕事です!)


 求人募集で新しい給食担当の方が決まりましたので、12月4日が最後の給食おばさんでした。
 帰り際にお世話になったお礼を言いながら菓子折りを差出しました。
すると、所長が言いました。
「まあ〜!お気遣いありがとうございます!でも、このお菓子は、ご利用者さまに還元したいと思います。いつものことながら、スタッフ一同そんな気持ちで仕事をしていますので・・・。」


 余談ですが、こんなこともありました。
施設の隣がスーパーで、給食でどうしても使いたいものがあり調理の途中で買いに行ったことがありました。
勝手口から静かに入ると、所長は事務机で仕事をしていたのですが、
「田崎さん!はい、領収書!」と笑いながら手を出すのです。
「え!?」
「だめよ〜!この間のゴボウの領収書もまだ出してないですよ!」
「ああ〜!いえ、たいした額ではないですから・・・」
「積もり積もって大きなお金になるんですから〜。」


 調理中に勝手口を出入りすることは頻繁にあります。飾り用の葉っぱを庭に取りに行ったり、干してある雑巾を取りに行ったり・・・。それなのに、わずか5分の買い物が把握されていたなんて驚きでした。所長が繊細で気配りに長けているからこそ、この施設が優れている所以なのだなぁと最後の日に納得しました。


 そうそう、所長が使っていた新品同様のバッグをプレゼントにいただきました。朝の出勤時に、「あら、ステキなバッグですねえ!」と褒めたことがありました。
「何をお礼に上げようかとずっと考えていたのだけど、あなたがこのバッグを気に入ってくれていたのを思い出して。こんなもので申し訳ないけれど他に思いつかなくてごめんなさい。」って。


 チューリップなどを混ぜた春の寄せ植えを数鉢準備していますので、時季が来たら持って行こうと思っています。
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