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進行するお母さんの認知症2010-01-13
 映画を観終わられたお母さんが、やっと寝入られたのを見届け、洗面のために部屋を出て窓を覗くと辺りは銀世界でした。午前4時半、2階に上る階段の窓からの眺めです。都心部ですので国道を走る車は途切れることがありませんが、雪は静かにしんしんと降り積もっていました。(露出の関係もありひどい画像です。)


 お母さんの認知症が驚くほど急速に進んでおり不穏状態はいっそう激しくなってきました。何よりもお嫁さんの疲労度が心配で、週3日を超えて連日お泊りをしています。元々夜型の私ですが、お母さんにお付き合いをするうちに私まですっかり昼夜逆転の日々です。


 正月三が日を過ぎるころから、亡くなられたお母さんのご主人が、若い女性と駆け落ちをしたということになっています。(お父さまは、決してそんな方ではなかったようですが・・・。)
 腹を立てられているにもかかわらず「お父さんは、100万か200万円のお金しか持っていかんかったからお金を振り込んでやらにゃならん。家を出てもう10日も経っているとに・・・。」「警察から電話があって、死んだという通知があったけど、水死したのかどうか原因を突き止めにゃならん。」「お父さんは、ほんとうにいい人だった!」
 かと思えば、「あの女の新築中の家に石を投げてやる!あんたは、私の探偵にならんといかんよ!」
「私は、お父さんにどんな仕返しをしようか?私も恋人を作って対抗せにゃならん!」とか、夜になって頭が冴えてくると、機関銃のようにひっきりなしに喋り続けられます。


「お母さん、お父さんは今何歳ですか?お母さんは、87歳ですよね?」
「私が87歳ならお父さんは、83歳たい!」
「83歳にもなって、お父さんがそんなことなさるんですか?」
「そりゃぁ、男っていくつになっても女に興味を持ってる人もいるやろ!」
「お母さん、お母さんは、お父さんが病院で亡くなったことご存知ですよね?死因は何でしたか?」
「脳腫瘍たい!」
「亡くなられたのに、お父さんはまた生き返られたんですか?」
「死んだのと、今回お父さんが居なくなったのは別問題たい!あんたそんなことも分からんと?頭悪かねえ!」
「お父さんが生死の境をさまよって大変だというときに、みんな慌てもせんで知らん振りをしとる!他人事だと思うて!」


 このところ夜中になると、パジャマの上から服を着て毛皮の襟のコートを羽織り、リハパンの入ったビニールバッグに財布や眼鏡を詰め、「警察に行って来る!」「あの女の家に石を投げてくる!と外出の支度を始められます。時にはズボンも履かれていますが、片方の足しか通っておらず、裃のように裾はズルズル。


 「私は、お母さんの付き人ですからどこまでもついて行きますよ。石だったら、私が、砲丸投げのような重い石を投げてあげましょう!」
「あんまり大きいのを投げると警察が来るよ!」
「うん、そんなら、小さい窓をひとつ割るぐらいにしましょうか?」


 それに、最近はもうひとつ、“家出“という事柄が加わりました。
「私が居ることにみんなが厭な顔をしている。みんなに迷惑をかけていて、私なんか居らんほうがよか!」
「みなさんがお母さんに冷たいなら、もうこんなお家出ちゃいましょうか?」
「うん、そうたい!Jさん(お嫁さん)も、K男もJ子も、心があるならもっと行動に表れるはず!」
「そうですか。お母さん、みなさんがお母さんに優しくされないのなら私だって許せません。お母さんがかわいそう!」(私だけいい子!)
「いや、・・・でも時々は優しくしてくれる。K男もJ子も優しい子でね。Jさんだって、よくしてくれるたい。」
「そうよね、Kさん(息子さんの名前)も心配されていますよ。お母さんが出て行ったらみなさん悲しいですよ。」
「そうやね、よう考えにゃいかん・・・。


 お嫁さんから連絡を受けた娘さんの励ましの電話に、「あんたもたまには会いに来てよ〜!」とオイオイ泣かれる。(娘さんは、昨夜泊まって今朝帰られたばかり。)ところが、電話を切ると、切った途端、「Jさん(お嫁さん)が、電話よ!って言うてくれたけど話させてくれんかった!」とおっしゃる。
「あら、お母さん、お話できなかったですか〜?私が悪かったですねえ、すみませんでした。そんならもういちどお姉さんにかけ直しますね〜!」神妙な顔をして謝られるお嫁さん。心は笑顔!


 そんな出来事で数時間が経過し、そのうちお嫁さんがぜんざいを持って来てくださいました。
「お母さん、出て行くなんてそんな悲しいことは言わないでください!」


 お部屋の中で出支度をしたり、玄関までよろよろと歩いたりですっかり疲れていたお母さんは、お嫁さんの提案に妥協して、今夜は出て行くのを見合わせようと、美味しそうにぜんざいを食べ始められました。午前1時でした。


 その後、悲しみからの気分転換していただこうとビデオを観る提案をしました。
「お母さん、今夜はビデオを観ましょうか!?」お母さんは、一緒にビデオを観てくれるのを喜ばれます。
「うん、そうやね!何にする?!」
 ロバート・ミッチャム、フランク・シナトラ出演の1955年のアメリカ映画「見知らぬ人でなく」を観ました。(3時間ものでした!)お母さんは、10数回も観られているので場面場面で先回りして私に次のあらすじを話してくださいます。・・・これが、認知症の面白いところです。こういう能力はまだ失われていないんですね。


 これは、思いのほか結果良好でした!映画を観終わったお母さんは、
「面白かったねえ!さっき私が言っていた“女の話“なんてどうでもいいことに思えてきた!さあ、もう寝よう!」
とご満悦で久々におとなしく静かに入眠されました。


 ですが、ある夜は、せん妄状態が夜中続き、壁を叩く、奇声を上げる、大声で息子さんや娘さんの名を呼ぶなどもありました。ベッドの手すりを掴んで起き上がろうとされるのですが、足や腕の力がないので起き上がれない。両足で反動をつけてみてもやっぱり起き上がれない。ひっくり返ったカメさんのようでした。ベッドの脇に足が出てくると、私が足をまたベッドに収める。私は、ベッドの脇にしっかり座り掛け布団で降り口をガード。ベッドから降りてお部屋から出られると、2階に寝ておられる息子さんご夫婦を起こしてしまうことになるので必死!!
 これが何と2時間も続きました。お母さんの凄まじい体力に私もへとへと!力尽きてとうとういびきが聞こえてきたのは朝の6時半でした。


 お正月を過ぎてからは、こんな状態ですので危なかしくて目が離せず、私はお母さんのベッド下に布団を敷き待機しています。寝息が聞こえると安心できるのですが、寝返りの布団の音でハッとします。ベッドを降りられるときの転倒が一番心配です。先日は、寝付けなかったのか午前1時から6時までの間に8回もトイレに行かれました。


 寝付かれる時間がいつも明け方近いので、2日間でしたか、お嫁さんと、就寝薬の精神安定剤デパス1錠、睡眠導入剤レンドルミン半錠だったのを、レンドルミンを2錠にしてみようということになったのですが、数日後、あの激しいせん妄状態が、どうもレンドルミンの副作用だったという結論に達しました。
 睡眠導入剤が、反対に睡眠障害を起こし、泥酔に似た容態とともに多動、幻聴、幻視、感情の不安定(ぼやっとして眠そうで夢見るような状態なのに、突然、興奮したり怒り出したり怖がったりなどに変化します。)などを引き起こすのを知りました。


 ご家族はさすがにギブアップのご様子で、施設入居を考え始められました。お嫁さんは、相変わらずの笑顔ですが、顔の艶がなくなり気分は高揚していて(危ない!?)極限状態です。私は、夜中に一睡も出来なくても自宅に帰ればすべてが自分の時間ですので、お昼に帰っても夜までぐっすりと眠る時間があります。


 そんな極限状態の中、睡眠不足の私を気遣って、仮眠してから車の運転をするようにとまた布団を敷いてくださったりするのです。(可笑しいのですが、それをまた片付ける私の手間!)やっと帰る支度を始めて、部屋に荷物を取りに行くとエアコンが点いています。
「Jさん(お嫁さんの名前)、エアコンが点いていましたけど・・・?」
「ああ〜、あきこさんが寝るときに寒くないようにと思って点けときました。」
 私が帰宅したころには、必ずメールが入ります。「無事に着きましたか?」と。
 お昼に帰宅すると、わが家も雪で覆われていました〜!


 そんなお嫁さんの気遣いと優しさに支えられ、今私は何をしてあげれるのでしょう?お嫁さんに少しでも多くの睡眠時間を確保してあげること、お母さんを一手に引き受けること、家事を軽減してあげること・・・買い物、掃除、食事の用意、施設のパンフレットを取りに行くこと、説明を聴いてくることなど。
 今では、お母さんから目が離せず料理をする余裕がありませんので、時々自宅で作った食事の差し入れをしています。お預かりしている買い物用のお金も使う気にはなれなくなりました。私もほとんど先様でご馳走になっていますので。


 決してお母さんのことを笑いものにしているわけではありませんが、あまりにも支離滅裂な言動や奇異なありさまには、認知症の再認識と可愛さとをお嫁さんと二人で笑って慰め合うのが大いなるストレス発散です。
いつの間にか家族の一員となり、お嫁さんとは同じ目的を持った“同士”になってしまいました。


 今夜は、宿明けの自由時間を一日いただき、ブログを書きながらの息抜きです。明日は、どんな夜になるのでしょうか?
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