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失語症の方とのお付き合い Part22011-02-19
 今までお年寄りの方とのお付き合いは、ほとんど相手の方のお話を聴くことばかりでしたが、今度は反対に無口な方に対して喋りかけることがひとつの仕事のようになってきました。観られているTVについての話題、ご家族の話題、花や天候、最近の自然の様子、私の私生活のことについてなど。食事のときも、仕事をしたり介助をしながら、ふんだんに使った野菜料理の内容、食品の効能などをY子さんの反応を見ながら話しかけました。私の話に、へえ〜、とか、まあ!とか、そうね!とか、いつも相槌を打ち笑ってくださいます。


 それも、楽しい会話はトイレ介助の際にすることが多いです。
 昨年10月のY子さんのお誕生日の朝、
「今日はお誕生日なんですねえ!おめでとうございます〜!」
「ありがとう!」
「Y子さん、おいくつになられたんですか?」
「えっと〜、・・・18かな?いやあ、19やったかな!」
「わあ〜、お若いんですねえ!」
「あはは・・・忘れてしもた・・・。」


 いくらお喋りを得意とする私でも、一方通行の話題には事欠くこともありました。ところが、昨年末のことです。ダイニングキッチンで息子さんのTさんと会話されていました。ときどきは、かなりしっかりした話し方をされるときがあります。
「そいでお母さん、してもらえんかったと?」
「うん、してくれんよ!」
「そうねえ・・・ヘルパーさんも一生懸命やけど忙しいもんね。」
「田崎さんみたいには、ちゃんとしてくれんと。」
え?!・・・料理を作りながら聞くともなしに聞いていた会話でしたが、“田崎さん“という言葉に耳が反応しました。私は振り返り、テーブルの向こうのY子さんに身体と手を伸ばしました。
「Y子さん、私の名前、ご存知だったんですか!?」
「知っとうよ!」
「え〜っ!、知ってらしたんですか!?」
「ずっと前から知っとります!」(得意そうに笑いながら。)
いつも私を呼ぶときは、言葉にならない声で呼ばれ、言葉になったときも「ねえちゃん!」だったり娘さんの名前だったりでした。ちゃんと分かってらしたんだ!と初めてY子さんのことを認識した瞬間でした。


 それから意識的に観察をするうちに、思考はかなりしっかりされているということが次第に分かってきました。Y子さんも、私のことをしっかり観察されているということも。
トイレで手間取ったり、特別に丁寧にしてあげたときなど、
「ごめんね、ありがとう!こんなにしてもらってすいません!」
「何度もすいません。」
「悪かねえ。手数かけます。」と、
こちらがしてることをちゃんと受け取ってくださっています。
 それに、更衣の際の手順もわきまえておられて、私が今からやろうとしていることを先読みして次々に身体を動かして協力してくださいます。また、おっちょこちょいの私に、いろいろ教えてもくださいます。「エプロンは?」という意味を合図されます。洗面のとき、つい忘れそうになるからです。トイレで立ち上がっていただこうとしているときも、私は膝掛けを脇に置くのをこれまたよく忘れます。Y子さんは、けっして忘れられません。必ず膝掛けを取ってからしか立ち上がられないのです。


 お宅への出入りは、車椅子用のリフトのあるダイニングのドアからするのですが、雨の日は庇があっても、靴を脱ぐ階段の踏み台に雨が当たります。私が、ご挨拶をしながらお部屋に入ると、ドアを指差しながらいつも何やらムニャムニャ言われます。最初は分からなかったのですが、「雨が振り込むから靴は玄関に入れなさい。」と言われているのでした。


 前回のブログで、失語症と認知症の境がよく分からないと書きましたが、よく考えてみるとやっぱり違います。失語症は、言語障害のほか、記憶障害などもありますが、見当識障害や妄想などはありません。したがって、Y子さんには認知症はありません。(Y子さん、ごめんなさい。)


 これもトイレでの会話です。
「あ〜たは、おいくつですか?」とY子さん
「いくつに見えますか?」
「う〜ん・・・と、70か80かな?」
「ああ、そうか!じゃあ、Y子さんはおいくつですか?」(思わず噴出しながら)
「私は、78かな?」(正解)
「何年生まれですか?」
「昭和8年」(正解)
「そうなんですね!じゃあ、お父さんはおいくつなんですか?」
「お父さんは、80、ふたつ上やもん。」(正解)
「Y子さん、すごいですねえ!!」

 
 これもトイレで、
「昨日はお休みをいただいてすみませんでした。」
「何かあったと?」
「ええ、親戚のお葬式だったんですよ。」
「まあ!、誰が死んじゃぁと?」
「夫の姉婿です。」
「そうねえ。・・・おいくつだったと?」
「65歳でした。」
「まあ、若かとにねえ!何の病気やったとですか。」
「肺癌で、脳にも転移してたそうです。」
「まあ、可愛そかったねえ。・・・それで、おいくつだったとですか?」
「65歳でした。」
「まあ、そうね。若いとにねえ。大変やったねえ。・・・それで、その人はおいくつだったとですか?」
私は、初めて訊かれたときと同じく大真面目に「65歳だったんですよ。」と答えました。
 Y子さんは、更に同じような言葉で私を労ってくださって、私が話題を変えるまで繰り返し年齢を訊ねられました。Y子さんは、私の不幸?をしっかりと汲み取ってあげようとされていたのです。だから、少ない語彙を出し切って繰り返し繰り返し慰めてくださっていたのです。
コメント
 久しぶりのブログ、懐かしく嬉しく読みました。
こちらまで温かい優しい気持ちなります。
介護される方もする方も心が通い合ってゆったりと優しい時間が流れていくようです。
お二人のお人柄なんでしょうね。
家族であっても我を張り合って上手くいかないことももありますよね。
自分の気持ちを伝えるのは本当に難しい。相手の気持ちを知るのはもっとね。
私は修行が足りません。反省〜
冬の庭仕事頑張りましたよ。
命いきいき息づく春、待ち遠しくてなりません。
クマちゃんも幸せそうでよかった。
季節の変わり目、がんばりすぎないでくださいね。
(うさこ 2011-03-02)
 うさこさん、ありがとうございます。
 ずいぶんお久しぶりです!お元気になられましたか?

 冬の庭仕事頑張られたんですね。どんな風になったのでしょう?今年は何が植わったのでしょう?ずっと思っていましたよ。上げようと思っている苗たちをどうやって届けようか、お元気になられたかと、庭に出るたびに思っていました。

 もう大地は春です。待ちに待った春が到来しましたよ〜!お庭を見に行こうかしら?

 そうそう、昨日はうさこさん伝承のかしわご飯を作りましたよ。あなたのことを思いながら。あのレシピ、みんなにも人気でとても気に入っています。おかげさまで!!
(“野の花” 2011-03-02)
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