【 梅原司平の部屋 】 - 公式HPより-
▼[アジアの子どもたちは今 ]
私自身の趣味からするとフィクションよりもノンフィクションの方が好きです。
小説ならストーリーの展開もそうですが、
主人公や脇役の性格描写や生き様にこだわったものを好んで読みます。
そんな中で、久しぶりにズーンとくる本にやっと出会いました。
本というよりも講演を書き起こした講述録です。薄っぺらな小冊子です 。
本は薄っぺらでも中身は分厚いのです。
講演者は、NGO沖縄アジアチャイルドサポートの代表理事・池間哲朗さんです。
愛知県の北方中学校で話されたものがまとめられてあります。
ちょっと長いタイトルですが「閉ざされた世界の中で懸命に生きる子どもたち」
と書かれてあります。
まずは自己紹介にはじまります。
その後、先進国と開発途上国、貧しさが原因で毎日4万人が死んでいる、
一年間で1500万人が亡くなる、その内の90パーセント以上が子ども、
など今世界の人々はどういった状況にあるかが次々と明らかにされていきます。
地球上63億の人々が生きるための食料は充分あります。
しかし、先進国と呼ばれるわずか20%の人々が世界の食糧の70%を食べつくしてしまっています。
世界人口の7%のアメリカと日本だけで、世界の食糧とエネルギーを半分近く消費しています。
日本人の食料の2割から3割は残飯です。一方今日の食べ物さえも手に入らない人々が
6億人以上もいます。
突き付けられたこの現実を私たちはどうとらえたらいいのでしょうか?
これでは世界から悪者扱いされても当然です。
私たちの飽食の裏側で命を亡くしていく人々が居るということを否定することは出来ません。
直接には手は下さないにしても、ある意味では殺人者、というと大げさでしょうか?
いいえ、私には決して大げさとは思えないのです。
貧困の問題は、食糧のあるなしではなく分け方の問題であるということが見えてきます。
フィリピン・マニラには、「スモーキーマウンテン」と呼ばれるゴミ捨て場があります。
そこに生きる子どもたちは夜明けとともに働きます。
朝の5時から10時間働いても一日50円程度です。池間さんが子どもらに聞きます。
「あなたの夢は何ですか」
「大人になるまで生きることです」
それもそのはず、この環境の中で15歳まで生きるのは3人に1人だそうです。
次は、モンゴルのウランバートルが紹介されます。
貧しさ故、親から見放された子どもたちがこの町だけで2000名以上も居ます。
ホームレスの子どもたちは、汚水とゴミが散乱するマンホールに暮らしています。
いわゆるマンホールチルドレンです。
12歳の少年が池間さんに「早く人間を終わりたい」と言ったそうです。
ウランバートル郊外やダルハンという所には、池間さん始め沖縄の善意の人達で出来た、
マンホールチルドレン保護施設「沖縄の家」があります。
そこには自分の名前も誕生日も知らない子が何人もいます。
その少年の1人がこう言ったそうです。
「捨てられた僕だからこそ、立派な大人になるんだ」と。
タイの貧しい山岳民族の話もあります。
12万円で女の子が売られてしまいます。
カンボジアには、100円の靴が買えなくて死んで行く子どももいます。
ゴミの中での暮らしです。ガラスで足を切り破傷風で死んでいくそうです。
たった100円の中古の靴が買えないんです。
センソックと呼ばれるこの地域にもまた池間さんたちは学校を創り、井戸も掘りました。
それがきっかけとなり、その後日本の別の団体、そしてイタリア、インドと引き続き善意の校舎が建てられ、
今では3000人もの子どもたちが通っているそうです。
時には彼らと共に暮らしもした池間さんの話は、たとえ語り口は優しくてもやはり迫力や説得力が違います。
言うまでもありませんが、これらの学校は政治の力で出来たわけではありません。
一人ひとりの小さな善意の力で出来たのです。
私はここに時代を変える大きな力があると思います。
こんな話もあります。
ゴミ捨て場の子どもたちと仲良くなった池間さんは、ある日みんなをピクニックに誘いました。
弁当は池間さんのおごりです。
フタを開けてみんなビックリ。
今まで見たこともないようなごちそうを見て大騒ぎです。
しかしその弁当を子どもたちは食べませんでした。またフタをしてしまったのです。
6歳ぐらい の女の子が泣きそうな顔で言いました。
「こんなご馳走は私一人で食べることは出来ません。
家に持って帰ってお父さんお母さんと一緒に食べてもいいですか?」と言ったそうです。
これを読みながら、私は涙が止まりませんでした。
この日本では親が子を殺し、子が親を殺したというニュースが毎日のように流れます。
私たち日本人は本当に豊かでしょうか?
アジア各地の想像を遙かに超える貧困の中、
それでもなお心豊かに生きようとする子どもたちを忘れてはなりません。
この池間さんの凄い所は、講演の中で子どもたちに何も強要しないことです。
このアジアの凄まじい現実を知った時、何かしなければと思うのが普通です。
何もしなければ罪の意識にさえも駆られてしまいます。
ころがこの池間さんが子どもたちに願うのはたった3つだけです。
1、理解すること。知るということも大切なボランティアです。
2、少しだけ分けること。100%の愛はいりません。0.1%でいいんです。
3、そして何よりも大切なのは、自分自身が一生懸命生きることです。
ちなみに、この小冊子もまた沢山の方々の善意、カンパから作成されていました。
記載された人々の名前の中に、かつて私のコンサートを取り組んで下さった方々の名を見つけ胸が
熱くなりました。
その本の最後には、中学生の応援団として、と記されてありました。
(是非この本を読んでみたい、中学生にも勧めてみたいと思われた方は、プラナの事務局にご連絡ください。)
http://www005.upp.so-net.ne.jp/pulana/(梅原 司平公式HP)
http://www.centerpro.co.jp/umehara/umehara.htm(”折り鶴”歌の試聴ができます)
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