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チッチ2012-02-14
 昨年の8月11日、暑い夜でした。
娘を迎えに行った帰り、県道から我が家に向かう小道に車のハンドルを切ると、土手の下にうずくまっている子猫を見つけました。
思わず車から降りて、娘と子猫の傍に近づきました。


 「連れて帰る〜?」
「うん、そうしようよ!あのね、2,3日前からこのあたりにいたんだよ。ずっとお母さんに言おうと思っていたんだけど、昼間は、植え込みの陰にいたの。・・・よく、犬に噛まれなかったと思うよ。」


 思い起こせば、子供のころ、捨て犬や捨て猫を家に連れて帰ると、
「飼えないから元の場所に置いてきなさい。」と決まって拒否され餌をやることさえ許してもらえませんでした。
でも私は、動物好きだった子供のままに大人(見かけだけですが。)になったなあと思います。


 ここは田舎なので、今でもときどき捨て猫がいて、なるべく目を合わせないようにしていたのですが、まともに遇ってしまうとどうしても見捨てることができません。
 店をしているときも裏のウッドデッキで、野良ちゃんたちに食客としてのお接待はしてきましたが、家の中ではお客さまの手前ちゃんと飼ってやることはできませんでした。
料理店で、猫が2匹もうろつき回るのはさすがに気が引けましたから。


 しかし、飼えないという制約がもうなくなったのですから、迷うことなくうちの子にしようと連れて帰りました。
 生後3ヶ月くらいだったのでしょうか?
ひどく痩せていて、背中の骨が飛び出していました。
声も特別小さくて搾り出すようなしゃがれ声でした。
最初は声帯異常かなと心配したほどです。
目ヤニがすごく洟水もたらしていました。
何度もくしゃみをするので、そのたびに覗き込んでいる私の顔に洟水がかかりました。
 汚れていたので、正式に我が家に迎い入れるために、まずシャンプーをしました。その後、魚の缶詰をやると、よほど飢えていたのでしょう、その食べること食べること!
大丈夫?と思うほどよく食べました。
10歳になったキジーだって缶詰は一日に1缶しか食べないのに、最初の頃は小さな身体で3缶近く食べていました。


 数日経って名前は、 “チッチ“になりました。(男の子なのに)


 子猫を飼い始めるといつもそうですが、私を母親だと思い、必ずおぼつかない足どりでキッチンに立つ私の足にまとわりつくので危険極まりなく、それで私は子猫が家に落ち着くまでエプロンの胸の部分を縛ってカンガルーのように“抱っこポケット”を作り、子猫は首だけ出して一緒に移動できるようにしてやりました。
夜は私のベッドで眠りました。


 とても臆病な小心者ですが性格はいたって穏やかでした。
私が外出から帰ると、寝ていても必ず眠気眼で玄関先まで出迎えてくれました。
私の行くところどこへでもついてまわりました。
2ヶ月も経つと庭デビューをして、私が庭仕事をしていると、虫を取ったり草むらでかくれんぼをして遊ぶようになりました。
狐のように尖っていた顔も、ようやく少し丸みを帯びてきました。


 ただ、我が家で2匹目の猫を飼うことの心配の種はただひとつ、今飼っているキジーが、見かけによらず嫉妬深く、他の子が我が家に侵入することを許さないことでした。
ウッドデッキで外猫として飼っていても、他の猫を可愛がっていると猫パンチで嫌がらせをしていました。
「私のお母さんなのよ!なによ、あんたなんて!」って、喋ったらきっとそんな感じでした。
 何度か、もらわれ先が見つかるまで、子猫を数日飼っていたことがあるのですが、シャーッ!と大きな口を開けて威嚇をします。決して傍に寄せ付けません。
元々乱暴な性格ではないので危害を加えるようなことはないのですが、とにかく機嫌が悪くなって、私にも寄り付かなくなり、挙句の果てには家出をしてしまいます。
お腹が空くとご飯を食べには帰るのですが、食べ終わるとそそくさと出て行ってしまうのです。
今回は夏でしたので、いつも離れの玄関の前の籠の中で寝ていました。
キジーも急にお母さんを取られてかわいそうでした。


 でも今度ばかりは、チッチがずっと我が家の子になるわけですからキジーに何とか慣れてもらわねばなりません。
1ヶ月半が過ぎ、どうやら並んでご飯を食べてくれるようになりました。
やんちゃなチッチと少しずつ外で遊んでくれるようにもなりました。
 子供のエネルギーは、人間でもそうですが半端なものではありません。
チッチも、威嚇しなくなったキジーに甘えて、タックルで飛びかかっていくのがたまらなくおもしろい遊びになりました。
キジーが家に帰ってきた姿を見つけては飛びつき、庭にいるキジーを見つけては、一目散に走って行って身体にぶら下がり足キックを始めます。
キジーも一緒になって庭中を駆け巡り、木に登り、草の陰に隠れ、自分からも挑みかかって遊んでくれるようになりました。
でも、キジーはもう満10歳ですからおばあさん猫です。絶え間ないチッチの攻撃とエネルギーにかなり疲れてきました。
いつもいつも、尖った爪と牙で間断なく挑みかかられては身体が持たないのでしょう。
かなり閉口しているときがありました。
もっとキジーが若かったら申し分なかったと思われます。


 そのうち、ときどきはキジーがちゃんと叱ってたしなめてくれればいいのにと思うようになりました。
本気で怒ればキジーの方が断然強いのですから。
でも、キジーも母性が出てきたのか本気で怒ろうとはせず、疲れたら迷惑そうに逃げて行くことで対処するようになりました。
そして、どうにか家に入って縁側の籐椅子のお座布団で寝てくれるようになっていたのに、隙を見て挑みかかられては安眠できなかったらしく、初冬の頃まで近所の納屋で寝ていました。
本格的に気温も下がってくるとさすがに帰ってくるようになりましたが、いつもの私のベッドは完全にチッチが独占してしまっていましたので、ベッドの足元やキッチンに寝たりしていました。(冬場だけはいつも私の枕に頭を並べて寝ていましたから。)


 甘えん坊のチッチは、夜になると「早くベッドに行こうよ!」と、私についてまわり浴室までも入って来ました。
湯船の縁に座って湯船のお湯で遊んだりお湯を飲んだりしていました。
トイレにもついてきました。
パソコンの前に座りいつもモニター画面が見えなくなりました。
長いしっぽは、キーボードの上に振り振りと垂れて邪魔をしながら、「早く寝ようよ!」しきりに訴えました。
ベッドでは、寝る前に本を読む私の胸の上で眠っていました。
本を読み終えれば枕の上で私の顔に身体をくっつけて寝ていました。
相変わらずのくしゃみは、容赦なく私の顔を直撃しました。


 しかし、動物の成長は早く、幼児期から少年期、そして青年期へとみるみる変化をしていきました。
年が明けてからのチッチはもう完全に青年になっていました。
 夜の食事時や私がパソコンで遊ぶ時間は眠たくなる時間らしく、その数時間だけ私の膝に座りたがりましたが、私から離れて行動することが多くなってきました。
 もはやキジーにタックルすることもなくなり、行動範囲も広くなったようで外出時間もかなり長くなってきました。


 食欲は相変わらずで、キャットフードの消費量もすごかったですが、特に鯵の炊いたものが大好物で、
私は小鯵の買い置きを切らさないように気をつけるようになりました。
朝も昼も夜も、「鯵をちょうだい!キャットフードでなく鯵をちょうだい!」と大きな声でうるさいくらいに訴え続けました。これだけは、どうにも止めさせられませんでした。
(そう、いつのころからか普通の声になりました。)
肥満が気になるようになり、一日の量を制限していましたが、外出の時にキジーのために入れておくキャットフード(キジーは小食)は、見つけ次第チッチが食べていたようでした。


 男の子なので、青年期になったら早速去勢手術をしなければと構えていましたが、家の中で雄猫特有のマーキングのおしっこをかける行為も見られませんでした。
性格は相変わらず温和で、いつもおっとりしていました。
呼んだら必ず返事をしてくれました。
その返事の仕方が余りにもかわいいので、私と娘は何度も名前を呼んでは笑い合いました。
数回続いた「ミャー」がそのうち「ミャ!」に変わり、次第に面倒臭そうに、「ウム!」「ん・・・」となり声もだんだんと小さくなっていきました。
まさに私たちは癒されていました。
懐かれて寄り添われるほどに愛しさが増し、私は一日に100回も「かわいいチッチ!」「良い子のチッチ!」と顔をすり寄せながら歌うように話しかけました。
毛が軟らかで、まるで綿毛のようでした。


 子猫の頃、襖を爪でバリバリに剥がしました。
チッチのベッドにしていた座布団の綿を食いちぎってボロボロにしました。
柱で爪を磨ぎました。
テーブルの上に上がって食事を分けてくれとせがみました。
けれど、何事も一度叱ると繰り返すことはありませんでした。
鼻の先に食べ物を近づけても食べようとはしませんでした。
トイレを教えてやると一度で覚えて粗相をしたこともありませんでした。
キジーへのやんちゃ振りがひどくて、本気で叱ると、腰を落として部屋の隅っこへ移動し、その落ち込みようがしおらし過ぎて笑えました。
その後は、決まって背を丸めて寝ていました。


 人間に愛されるために生まれてきたような、賢くて飛びっきりいい子でした。
 うちの子になってちょうど半年でした。
2月10日の夜、突然チッチは短い生涯を閉じてしまいました。


 夜の9時前、仕事からの帰宅途中に、家から500メートル程離れた県道のカーブに差しかかるセンターラインの上に血まみれで倒れている白っぽい猫が見えました。
チッチの毛並みのミルクキャラメル色に似ていましたが、まさかそんな遠くまで行動範囲が広がっているとは知らず一旦そのまま通り過ぎました。
しかし家の中や庭を探しても所在が分からなかったので胸騒ぎがして、懐中電灯を持って現場に戻りました。
 取り敢えず道の脇に運び懐中電灯で確かめました。
・ ・・チッチでした!
頭部をやられたらしく、耳からも大量の出血がありました。
身体はまだ温かく、“たった今“だったように思われました。


 家に連れて帰る間も信じられず、明るいところでちゃんと確認しよう、違う子だったら家で葬ってやろうと涙も出ませんでした。
 でも、チッチに間違いないと確信したのは、長いしっぽの先の鍵型の特徴と、うちに来た時からあった左の鼻の横の深い傷跡でした。

 
 ただ呆然と、呆然と・・・
まだ温かなチッチを膝に抱えたまま涙もこぼれず、これは夢を見ているのかもしれないと思いました。
胸から下はいつもの軟らかなミルクキャラメル色で、数時間ひたすら腰としっぽを撫で続けました。
チッチの身体が冷たく硬くなってしまうまで・・・。


 別れは辛いです。
庭に埋葬するとき、赤く染まった顔と可愛いしっぽが見えなくなろうとするとき、ほんとうにチッチともう会えないのだと思いました。
 

 数日経って、やっとチッチの死を受け入れることができるようになりました。
チッチに癒された幸せな時間に感謝するため、今日は彼との短かった思い出を辿りました。


 家の中で飼えば、事故に遭うこともなく、“猫エイズ”で死なせるような悲しい出来事もないのでしょうが(以前、最愛のキキという子を猫エイズで死なせました。)、庭で虫や鳥たちを追っかけたり、木に登ったり、ホクホク土の花壇に穴を掘って気ままに用足しをしたりする幸せな様子を見るのが私の喜びでもありましたので、短命でもやはり何の束縛もせずに本能を全うさせてやれてよかったのだと思います。
また、そのうちチッチの生まれ変わりに会える日が来ることがせめてもの願いです。


 皮肉なことにキジーは、また穏やかなのほほん顔に戻り私のそばにいる時間が増えてきました。
キジーも、きっとたくさんの我慢をしてくれていたのでしょう。
コメント
あっこさん、チッチちゃんが天国へいっちゃったのですね・・・・・。
あの、チッチちゃんが・・・・びっくり致しました。
私がお邪魔した時、何だかはにかんじゃって傍へは来てくれませんでしたが、本当にきれいな可愛い猫ちゃんでしたね。写真を拝見していると、気のせいか寂しい表情ですね。あなたとなおこさんに、短い間にたくさんの幸せと思い出を残してくれましたね。
キジーちゃんも、もの言わずともわかっているのでしょうね。ペットは子供とおなじですもの、失った悲しみはいくばかりかとお察しいたします。
チッチちゃんも、あなたにあえて良かったと
思っていますよ。それになにより、まだ暖かいうちに
あっこさんに、見つけてもらってあなたの腕の中で
天国に召されていったのですから・・・・・・。
悲しみが癒えるまでまだ時間がかかると思いますが、
キジーちゃんがいてくれるから少しは、慰めてもらえますね。ご自愛くださいね。
  −−合掌ーー
(吟 2012-02-20)
 吟さま、ありがとうございます。

 何度も何度も別れを経験し、何度も何度も心を締め付けられる悲しみを味わって、そしてこれからももっと多くの別れに遭遇していくのでしょうね。

ええ、チッチは幸せだったと思います。
私たちは精魂込めて彼を可愛がっていましたから。

 ところで、また今年も”わかめ採り”の日にちを狙っています。
 先々週、海に行ったのですがあまり潮がよくありませんでした。
お送りするための箱と、今年はちゃんと家で書いた手紙も持参して行ったのですが・・・。(昨年は郵便局でのなぐり書きでしたものね。)
 今度狙っているのは3月7日です。
・・・採れるかなあ?
採れたら到着は、3月8日です〜!
半分楽しみにしていてください。
(“野の花” 2012-02-21)
あっ子さん、磯、お気をつけてね。滑ってけがしないように!
昨年の、磯の香いっぱいのワカメを思い出しました。ほとんどを私一人で頂きましたぁ〜!
半分楽しみにいていますが、ご無理をなさいませんようにお願いします。
春が待ち遠しいですね。
(吟 2012-02-24)
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