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ヘルパー兼メイドの新しい仕事Vol.22009-08-20
 新しいヘルパーの仕事を始めて、これはほんとうに私向きだなと感じています。
いいえ、こんなにいい条件でしたら、ヘルパーをなさる方どなたでもそうなのでしょうが。


 お一人の方と、じっくり向き合える、急がなくてもいい、その方のペースに合わせて、湧き出してくる思い出話にとことん耳を傾けてあげられる。それに、お料理もできますし、空いた時間には、お掃除をしていろんなところを磨いてあげられる。・・・これは、仕事というより、私の癒しの時間のような気さえしています。


 8月13日が初出勤でした。といっても、ほんとうに仕事に行っているという感じではありません。
 数日前に、「お盆のお煮しめを作って欲しい。」という依頼のメールが来ていました。時間は、午後1時からのお約束でした。


 キッチンに入ると、里芋や蓮根、厚揚げ、こんにゃく、高野豆腐などの材料が用意されていました。お母さまは、まだ休まれていましたので、私は上がるなり里芋の皮を剥き始めました。
 忙しそうに動いていらっしゃるお嫁さんが、「どうぞ、好きに作ってくださってけっこうですから!思ったようにご自由にしてください。足りないものは買ってきますから遠慮なくおっしゃってください。」と言ってくださいました。
 「他人の台所って、使い難くって大変でしょう?私なんて、他人の台所ではお料理は、とても作れません。」とおっしゃいましたが、なぜか居心地が良くて、他所さまのお宅に居る感覚はありませんでした。すぐに自分のキッチンになってしまいました。キッチンを私に明け渡すと、お嫁さんは階上に消えられました。


 お煮しめの出し汁は、ペットボトルに入れて持参しました。頼まれもしない、きゅうりの中華風インスタント漬物や、胡麻豆腐も作りました。(畑で生ったきゅうりや胡麻豆腐の材料も持参。)
 私って、やっぱり台所に立つことが嬉しくてたまらないみたいです♪


 1時間もすると出来上がりましたが、お母さまはまだ起きられず、次の仕事を仰せつかっていなかったので、私は、1Fフロアーの拭き掃除をしたり、作り付けのユニット棚を磨き始めました。


 いくらキッチンを明け渡されても、やはり勝手にあちこちの引き出しを開けたり、冷蔵庫や調味料、乾物のたくさん詰まった納戸を覗くのは気が引けるものです。だけど、お手伝いさんなのですから、何がどこにあるのかは知っておかねばなりません。「以前いらしたお手伝いさんは私よりずっと詳しかった!」とおっしゃいますし。


 収納が行き届いています。食器もフォーク、スプーン類も鍋やキッチングッズや調味料の棚も・・・。日用雑貨の入ったいくつもの引き出しの面には、ひと目で分かるようにきちんと内容物が手書きで記されています。シンクの排水のザルもピカピカに光っています。


 こんなにきちんと整理されたお宅に居ると、居住いが自ずから正されます。背筋が伸びます!そして、昔祖母からよく言われた言葉を思い出しました。
 「玄関の靴はきちんと揃えなさい。掃除の行き届いたきちんとした家には、泥棒も怖気づいて入って来れないから。」と。最近の泥棒さんには通じないかもしれませんが、子供時代に聞いたその意味が分かるような気がしました。


 それなのに、私もお嫁さんも、すご〜くアバウトです。本来なら、いろんな契約を交わさなければならないのですが、何もないのです。2度目の面接に伺ったときに、私は、「何か紙面での契約を交わした方がいいかもしれません。」と提案したのですが、
「そうですよね、それじゃあ契約書は、田崎さんが作ってくださいますか?」
「まあ、そんな!苦手ですよ〜!面倒なことは苦手なんです。ご主人の病院の従業員さんもいらっしゃるからお手の物でしょうに!」
「ああ、私も全くダメなんです!」


 「ところで、賃金は、いくらご希望ですか?」
「はあ、何も考えていません・・・。」
「え?だけど、それは、一番大切なことですし・・・、はっきりおっしゃってくださった方が助かります。」
「それが、今回のご縁は、金銭的なことが目的ではなく、私の人生勉強としてお仕事をさせていただきたいと思っていますので、ほんとうに考えていないんです。お任せいたします。」
「まあ!」(お嫁さん、涙)
「それじゃあ、そのうち考えましょうか、ぼちぼちでいいです。」
「ああ・・・じゃあ、インターネットで相場というものを調べておきましょう。」
お互い話にもなりませんでした。


 いよいよ起きて来られたお母さまと、実家に帰ってこられた娘さんが、ダイニングのテーブルで話をされています。その娘さんが、“野の花”のお客さまだった方で、私をこのお宅に紹介してくださった方です。


 「あの人のこと、田崎さんだけど、なんて呼ぼうか?田崎さんって言うのもねえ。それに、私のこと、“先生”って呼ばれるのもおかしいねえ・・・、私は、あの人を看てあげたわけでもないし・・・。」
「田崎さんは、彰子さんだから、“あきこさん“でいいんじゃないの?」と娘さん。


 お母さまとお会いした、数日前、私は、「お母さまのことを何とお呼びしたらいいですか?」とお訊ねした際、
傍にいらしたお嫁さんは、「そうですねえ、母は、ずっと先生って呼ばれてましたから、ねえ、お母さん、“先生“がいいですよね?」
「先生ねえ、そうねえ、・・・そうするかな?」とお母さま。
「じゃあ、“先生”って呼んでください。」ということになっていました。


 それでも、何か不自然で気になられていたのでしょう。
私は、キッチンのカウンター越しに、「それじゃあ、“お母さん“と呼ばせていただいてもいいですか?」と口を挟みました。
「ふ〜ん、あんたも私の娘ねえ、そうね、そうやねえ、うん、お母さんでいいたい!」


 私も、正直、“先生”とお呼びするのは抵抗がありました。私の母が生きていれば、86歳ですから、ほぼ同じ年齢です。“お母さん!”とお呼びした方が、親近感が湧きます。
 しかし、使用人の分際で、大奥さまのことを“お母さん”なんてお呼びする厚かましいお手伝いさんが、どこにいるものでしょうか?
(この文章の中では、奥さまのことも“お嫁さん”と書いていますが、ほんとうはお名前でお呼びしています。)


 この日は、他にお客さまもいらっしゃいましたのでお母さまとは、たいしたお話もせずに17時に退散しました。私が作ったお煮しめがたくさん詰まったタッパーをおみやげにいただいて。
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