玄関前の木製の郵便受けで、シジュウカラが子育てをしていました。産卵から巣立ちまで、ひと月ちょっと。初めて間近で野鳥の子育てを見る機会に恵まれ、覗いてはいけないかもしれなかったのですが、興味津々に観察を続けました。
5月10日、私の肩の高さにある郵便受けに郵便物が来てないかと片手を突っ込んだ途端、小鳥が突然飛び立ちました。突っ込んだ手の先には、やわらかなものが触れました。郵便受けの蓋を開けて中を見ると、苔がびっしり敷かれていました。野鳥に疎い私でも、巣作りが始まったことを知りました。
郵便受けは、骨董品の漆器が入っていた15cm×30cmの箱を改造して作ってあります。
翌日には、棕櫚(シュロ)の幹を覆う暗褐色の繊維が多数持ち込まれていました。そのうち、クマ(わが家の犬)の毛もたくさん使われるようになりました。全体的に敷かれているのですが、底面積の1/3の部分は、窪みを持たせた丸く分厚い赤ちゃん用のベッドになっていきました。すごく精巧なのですよ!まるで芸術品です。 |
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5月13日、1個の卵を発見しました。白地に赤い斑模様が散らばった直径1cmくらいの小さな小さな卵でした。頻繁に覗くのは憚られましたので2,3日おきに見ていたのですが、3個に増え、5個になり、7個になって、最終的には9個になりました。
卵を確認した時点で、郵便受けには張り紙をして臨時ポストを作りました。
「このポストには、小鳥が巣を作っています。郵便物やお知らせ、回覧板などは、玄関前の白い鉢の中に入れてください。ポストの中は決してのぞかないでください。」
何の鳥か見当もつかず、卵が5個になった時、私がよく訪問させていただいているお気に入りの野鳥のサイトに、厚かましくも画像添付のメールを出して質問しました。
まず、この卵が何の鳥のものなのか、そして、親鳥が全く見当たらないけれど卵を温めなくてもいいのでしょうか?と。
そしたら、親切にちゃんとお返事が来ました。
「たぶんシジュウカラでしょうね。
10個前後になると抱卵に入ります。
卵は温めている累積時間で孵化しますので、ときどき抱卵をサボっても大丈夫なのです。
観察するのが楽しみですね。」
名前を教えていただいたのと、”温めている累積時間で孵化します”の回答に、「へえ〜、累積時間!」と想像もしなかった野鳥の生態を垣間見た気がして胸がときめきました。
しかし、その累積時間とやらにも時間が経つと新たな疑問が湧き起こってきます。 |
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卵が9個になった時、教えていただいたとおり親鳥の存在を確認することができました。
郵便受けの蓋をそっと開けてみると、親鳥が抱卵していました。警戒心からかシューと言うような声が聞こえました。本来なら危険を感じて忽ち飛び立つのでしょうが、卵を守るためじっと堪えて身構えています。羽根尾を広げているのは、たぶん身構えている様子です。
まさか親鳥がいるとは思わなかったので、慌てて蓋を閉めましたが、カメラは構えていましたので、震える手でどうにか1枚だけ写すことができました。こんなに間近でシジュウカラを見たのは初めてでした。
親鳥の出入りが頻繁になると、鳥獲り名人(名猫?)のわが家のキジーが、すぐ傍にあるエアコンの室外機の上で待機することが多くなってきました。そこで、室外機の上に載れないように植木鉢を敷き詰めました。 |
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6月4日、偶然にも卵が割れる瞬間を見ることができました。頭のてっぺんに毛が生えているのか、細長い模様のようなものが見えます。
あれよあれよと思ううちに、巣の中は、小さなピンクのうごめく赤ちゃんで一杯になりました。まだ翼のない手があり長い足があり、鳥とは思えぬ一般の動物に共通する姿でした。
生まれて間もないというのに赤ちゃんたちは、自分の頭よりも大きな口を開けて餌を待ち受けます。気配を感じたら即”餌”というのが本能なのでしょう。人間の赤ちゃんもそうですが、これが外界における生命の始まりです。 |
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翼ができ、骨格が整うにつれて産毛が生えてきました。産毛を見てから本羽が生えだすまでは、わずか一日でした。裸のピンクの部分が日ごとに覆われていきました。
私が覗き込むと口を開けていた雛たちは、この頃には警戒心もできて、反対にお互いの中にもぐりこんで身を固くするようになって来ました。
しかし、どう見ても4羽にしか見えません。途中、6羽が確認できていたのですが、あとの2羽はどうしたのでしょう。残りの3個の卵は孵化できなくて死んでしまったのでしょうか?
6月19日、もう完全に姿が整いました。
孵化から巣立ちまで約2週間と、ほかの方のサイトで読んでいました。2,3日前の朝から親鳥たち(両親?)が、電線に止まり、木の梢に止まりしてけたたましくツッピーツッピーと鳴き続けていました。普通のさえずり方とは違ったので、きっと巣立ちを促していたのでしょう。
「早くしたくをしなさい!」「勇気を出して飛び出しなさい!」「いつまでもそこには住めないのですよ!」「早く!早く!」鳥語の分からない私にも、切羽詰った鳴き声はそのように聴こえました。
6月21日朝、郵便受けの蓋を開けるともう巣立った後でした。覚悟はしていましたが、ガックリと寂しさに襲われました。
飛び立った跡には、卵のかけらも見当たりませんでした。卵のかけらはどうなったのでしょう?親鳥が食べたのでしょうか?
巣立った小鳥は、どこに行ったんだろう?親鳥は、いつもどこで暮らしていたのだろう?と素朴な疑問も湧いてきました。巣立った鳥たちは、また来年も戻ってきてくれるのでしょうか?分からないことだらけです。
私の庭は、背の高いたくさんの木々で囲まれています。
辺りを見回すと、大椿の藪の中を賑やかに飛び交っているらしい声を聴きました。時たま親鳥が姿を見せて飛び立ちました。嘴に餌をくわえて帰っても来ました。どうやらまだ餌をもらっているのでしょう。
早春にはカササギが、わが家の柿の木の小枝を一本ずつ嘴で折っては運んで、家の前の高いコンクリートの電柱にひと月もかけて巣を作っていました。雀は毎年、2階の雨どいの傍らの庇に巣を作ります。シジュウカラよりも早めに巣立ちました。
全く鳥に興味がなかった私でしたが、たくさんの野鳥がやって来ますので、せめて庭に来る鳥くらいは名前を知りたいと思うようになりました。この数年いろんな方々の野鳥のサイトを見せていただくようになり、おかげさまで少しずつ名前を知ることができるようになってきました。今回のことでシジュウカラの声も、確実に聴き取れるようになりました。
今回お世話になったかたのサイトをご紹介します。
http://www.ne.jp/asahi/kenharu/2008/index.htm
野鳥たちの画像も素晴らしい!薀蓄もすごい!書かれているコメントがユーモアたっぷりで笑わせてくれます。何よりも、野鳥を撮る眼差しが温かい!
しかし、野鳥だけでなくDIYのことキャンピングカーのこと、内容がかなり盛りだくさんでしかも博学で、どこを読んでもはまってしまいます。さすがアクセス数は、今現在407,516とすごい数です!
撮影した画像は、もっとたくさんありますので、詳しくはこちらをご覧ください。スライドショーでご覧いただくのががいいです。
http://picasaweb.google.co.jp/nohohon.nonohana/tgpADG#
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